エースのために戦う「ツール・ド・フランス」

 近頃、農家の抗議でレースが中断されたという報道がされた、自転車レース「ツール・ド・フランス」。ロードレースの世界大会としてはグランツールを呼ばれる
1. ツール・ド・フランス
2. ジロ・デ・イタリア
3. ブエルタ・ア・エスパーニャ
の3大レースがあり、このうち最も歴史が古く人気のあるレースがツール・ド・フランスです。
よく個人種目なのか団体種目なのか?というネタがネット上での話題にもなっていますが、ここに独特の考え方が存在し、このレースへの魅力のひとつとなっています。

団体競技でありながら、スポットを浴びるのは総合個人優勝者

 「ツール・ド・フランス」は結論から言うと団体種目です。ただし非常に魔訶不思議なシステムになっています。なぜなら団体競技でありながら、優勝として最もスポットライトを浴びるのは総合個人優勝者だからです。
「ツール・ド・フランス」では1チーム9人で戦うのですが、チームとして優勝を目指すのではなく、チームの中の1人(エース)を勝たせるために戦うレースです。エース以外のメンバー(アシスト)が勝つことはありえないレース。そこには「あわよくば」という言葉は存在しません。

アシスト選手も超一流

 なぜかというと、優勝を狙えるような有力チームの選手はアシストたちもトッププロ。チームと契約して報酬を得て走っている人たちです。チームはその選手たちにエースをサポートする役割を課しているのです。アシストが勝つということは、エースを勝たせるという役割を果たしていないということになります。どこの世界でも与えられた役割を果たせないプロに活躍の場は与えてもらえません。

自らのタイヤを差し出すアシスト選手

 ではアシストはどのようにエースを勝たせるのか。エースの体力を温存するため、前を走って風よけになり、他のチームに勢いがあれば自分のスタミナバランスを顧みず相手の戦術を乱し、エースがパンクすれば遅れが最小限になるよう自分のタイヤを、ドリンクが足りなければ自分のボトルを差し出す。そんな献身的な役割が求められます。アシストは優勝どころか完走ですら目的ではないということ。さらに言えば、そうは言っても自分が脱落すればチームとしては一つ駒を失うことになるので、単純に犠牲になればいいというものでもない。

伝統的な「役割分担」の考え方

 このように書き連ねるとアシストが日の目をみないかわいそうな存在に映るかもしれませんが、アシストが優秀であってこそエースに優勝のチャンスが訪れる。優勝を託されるエースも、レースを離脱するアシストもそれぞれがチームのなかの役割。ならば、チームに対してもっと注目してもいいのではないかと個人的にも思いますが、それも含めて自転車競技の魅力なのだと思います。